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2017/11/09

人の心を動かすデジタルサイネージの「裏側」を東京メトロに聞いてきた

インタビュー
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銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、南北線、副都心線……。首都圏を活動拠点としている人なら非常に身近に感じるこの9つの路線。運営するのは、東京地下鉄株式会社、通称「東京メトロ」です。

1日平均724万人(平成28年度)を運んでいる車両と、その人数が降りる駅の数々……そんな場所に設置されているデジタルサイネージは、まさに絶好の広告掲載媒体といえるでしょう。

そんなデジタルサイネージを運用するうえで、どのような工夫をしているのか。東京メトロならではの強みとは何なのか。東京メトロ 広告担当の宮地さんと間宮さん、そして、東京メトロの交通メディアを扱う媒体社・メトロアドエージェンシーの笹矢さんにお話をうかがいました。

地下だからこそ高い、「視認性」

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東京メトロが初めてデジタルサイネージを導入したのは平成20年のこと。有楽町線・副都心線の新型10000系の車内ドア上部ディスプレイ(Tokyo Metro Vision:TMV)で広告の放映を開始しました。

その後、平成21年には丸ノ内線の駅ホームの壁面に65インチの大型ディスプレイ(M Station Vision:MSV)を、平成25年には主要駅のコンコースに直方体の4面ディスプレイ(Metro Concourse Vision:MCV)を設置。

デジタルサイネージが世に浸透していく中で、徐々にその広がりを見せてきています。現在はこのTMV、MSV、MCVの3つのメディアで東京メトロは電子広告を展開しているのです。

笹矢「試験的に導入したデジタルサイネージ。広まっていく確信はありませんでしたが、お客様やクライアント様の反応を見てそのニーズが大きいことを悟りました」

2017年3月には、広告価値が特に高い銀座線のすべての車両にTMVを導入。広告を出稿するクライアントとしては、さらにその効果を期待できるような状況となっています。

笹矢「東京メトロのデジタルサイネージの強みは、何よりもその『視認性』ですね。外の景色が見えない地下ですので、ほかの交通広告よりもずっと目を留められやすいメディアだと思っています」

リアルタイムで外部データと連動し、30分おきにコンテンツを配信!

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地下だからこその強みを生かしている、東京メトロのデジタルサイネージ。近年の代表的な事例をお聞きしました。

笹矢「大きな反響があったのが、WBA世界ミドル級王座決定戦のときの村田諒太選手の広告です。試合日までのカウントダウンやチケットの販売状況、村田選手の練習状況などをリアルタイムで放映したMCV(コンコースに設置されたメディア)は、ボクシングファンのみならず多くの方に訴求できました」

チケットサイトや新聞社から送られてくる情報はクリエイティブサーバーで管理され、素材の統合や処理をしてパブリッシャー側のアドサーバーに送信されます。30分ごとにMCVを通じて配信される情報で、メトロのコンコースはボクシング一色に。見るたびに変わる配信内容は、嫌が応にも人々の試合への期待感をあおったといいます。

また、村田諒太選手の事例にとどまらず、東京メトロはリアルタイム情報の配信を積極的におこなっているとのこと。代表的なものが、大塚製薬のポカリスエットの事例です。

笹矢「大塚製薬さまのポカリスエットでは、製品告知の前に気温などの外部情報と連携して『熱中症情報』を配信しました。交通広告は自社の広告を流すだけのものも多いのですが、ユーザーにとって有益な情報を流すことで、接点作りを強化したのです」

また、別の事例では、場所や気温、イベント情報などをもとにリアルタイムでコピーを出し分ける取り組みもおこなっていたといいます。その場、その瞬間に通りがかったからこそ受け取れるメッセージを配信されたら、ユーザーも思わず足を止めてしまうでしょう。

退職する職員に送ったサプライズ企画「THE LAST TRAIN」

そんな東京メトロのデジタルサイネージを使った、あるプロジェクトが2017年春に実施され、SNSを中心に大きな感動の声を集めました。

そのプロジェクトの名は、「THE LAST TRAIN」。東京メトロとサントリーの「BOSS」がコラボして、東京メトロの駅員に仕掛けたサプライズ企画です。

対象となったのは上野駅務管区区長、石山浩治さん。1975年の入社以来、40年以上に渡って駅員として勤め上げ、2017年3月をもって退職することとなっていました。そんな石山さんが3月某日、最後の締めの作業を真っ暗な構内でおこなっていたとき、突然すべてのデジタルサイネージが点灯。映し出されたのは、同僚たちの姿と、退職を祝うメッセージの数々でした。

暖かい同僚たちの言葉に涙を拭う石山さんの前に同僚たちが現れ、サプライズは大成功。この模様はyoutubeにアップされ、2017年9月時点で50万再生される動画となりました。

笹矢「最初は駅のサイネージを活用した企画をサントリーさまと検討している中で生まれた企画で、サントリーコーヒーBOSSが『働く人の相棒』というコンセプトであるため、『働く人を支える』東京メトロで長年働いている人にスポットを当てることでお互いにとって良い企画になるのではと。それで話を進める中で、退職する方にサプライズをすることとなりました」

宮地「テレビにも大きく取り上げられて、サントリーさまも驚いていました。石山さんも、旅行先で声をかけられるほどの有名人になったみたいです(笑)」

3月27日から1週間の間駅構内デジタルサイネージで放映され、SNSでも広く拡散。多くの“働く人”の心を打ったこの企画は、ストーリーで人の心を動かすという新たなデジタルサイネージの方向性を指し示してくれているようです。

“このようなサプライズは人生初めてです。今までの会社人生で最高の時でした。その晩は興奮と感謝で眠れませんでした。普段、駅の事務所で「私は全線で一番幸せな駅長だ!」と口癖のように感謝していましたがそれ以上の幸せを頂戴しました。本当の幸せは「物や金では無い。人に思われることが幸せ」と強く感じました。「人は宝」ですね。”
東京メトロプレスリリース 石山さんコメントより引用
http://www.tokyometro.jp/news/images_h/metroNews170324_1.pdf

“目新しさ”の一歩先へ。ユーザーの心を動かすコンテンツ作り

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左からメトロアドエージェンシーの笹矢さん、東京メトロの宮地さん、間宮さん

デジタルサイネージというメディアが世に広く普及し、ユーザーにとっても当たり前のものとなりました。もはや“目新しさ”だけで興味を引くのは難しいものとなっているといえます。そこで重要なのは、東京メトロのリアルタイムコンテンツ「THE LAST TRAIN」に見られるような、人の心を動かすための工夫です。

ただ広告を配信するのではなく、どのようにしてユーザーに興味を持ってもらうか、態度変容をうながすかに着目することが、今後のデジタルサイネージの可能性を広げていくでしょう。

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